日記

東京上空

とある夜 そのとき私はいつの間にかその小さな窓に集中しすぎていたので、 ボーイング777-300の70メートルもある機体の存在も、それに乗る500名もの騒がしい人々の存在も、すっかり全て意識の外側に棄ててしまって、まるで自分のふたつの目だけが上空を飛ん…

なぜ、人は絵を描き文章を書くのか

たとえば、 とてもうつくしい夕陽が浮かんでいて、空がすばらしく染まっていて、 「見て、夕焼けがとても綺麗だよ!」 と、まあるい夕陽を指差して、隣を歩く君に言う。 とても自然なことだ。 うつくしい光景や状態があれば、それを誰かに伝えたくなる。 そ…

突如、ぼくに翼がもたらされた。

突如、ぼくに翼がもたらされた。 肩甲骨の部分に、あたかも生まれつき備わっていたかのような自然さで、ぼくはふたつの翼を感じた。 窮屈に折り畳まれていた双翼がパキパキと高い音を立てて、ぼくの背後に大きく広がる。 関節の鳴る振動が背骨を伝わって、身…

理想郷について

理想郷は記憶の中に存在する。 ぼくはこの休日、紅葉狩りに出かけた。 赤黄色に染まる木々が風にそよぐ光景は、なるほどたしかに絶景ではあったのだが、 ぼくがほんとうに身震いするような感動をおぼえたのは、絶景を眺めているその時ではなかった。 紅葉の…

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